2009年2月26日木曜日
2009年2月25日水曜日
"Little Brother" by Cory Doctorow
2007年12月に投稿された、Cory Doctorow著"Little Brother"の書評をお届けします。
何で今頃……? と尋ねられたら、「今読んでるところだから」とお答えするしかありません。
………………………………
2007年12月の投稿
たった今、コリイ・ドクトロウの"Little Brother"を読み終えたところ。
僕はコリイの書く小説が好きで、短編集の推薦文を書いたこともある。でも今回の小説は、コリイのノン・フィクションだけが与えてくれる喜びを味わわせてくれるものだった。
というのも、コリイという奴は根っからの「教えたがり屋」だから。世の中で一体何が起こっているのか、何が起こっているように自分が感じるているかという ことを、周りの人たちにしゃべらずにはおれない。そして、一度「教えたがり屋」の物の見方を身につけてしまうと、二度と以前のように物事を見ることが出来 なくなってしまう。
ダグラス・アダムスはその一人だった。ブルース・スターリングは時々、ウィリアム・ギブソンもそうだな。彼らは会話の時に一番その能力を発揮する。そして フィクションよりもノン・フィクションにおいて。Malcolm Gladwellはノンフィクションでそれが出来る。(僕は彼に会ったことはないから、実際に話したときにどうかはわからない。コリイやスターリングやギ ブソンとは、直接話すのが一番だ)。
"Little Brother"は、ヤング・アダルト小説で、ハインラインのジュヴナイルに一番近いように思う。(これ誉め言葉だよ。ハインラインが子供向けに書いた本 の大部分は、ほんとに素晴らしいんだ。なんでわざわざこんなこと書くかと言うと、世の中にはハインラインを読んだことがない人、大人向けに書かれたひどい 本しか読んでいない人がいるからだ。読んでか読まないでか知らないけどハインラインとは思想的に相容れないという人もいる。彼のジュヴナイルのすごさを ちっともわかっていないんだな。)
"Little Brother"の大部分はよく出来ている。政治的論戦であり、プライバシーと情報についての小論文であり、ハッキングとクラッキングと政治についての小 論文でもある。近未来のアメリカを舞台にしたテロの物語であり、17歳の少年マーカスと暴走する国家安全保障局との対決の物語だ。
正直であること、逃げ出さないことについての、そして賢さと愚かさについての物語。この本には、思わず応援したくなる瞬間、我が意を得たりと膝を打つ瞬間、自分は年を取ったなと感じる瞬間がある。
ただし完璧な作品とは言えない。コリイが出してくる悪人は、色んな意味で悪すぎるんだ。主人公のマーカスが議論で相手をグゥの音も出ないほど打ち負かすシーンには喝采を送 りたくなるけど、やりすぎるのはどうもね。イデオロギーに関わる議論の時は、対立する意見を持ちながらも一定の見識を持った相手を登場させてもら いたかった。カール・ローヴみたいな如何にもといった悪役を登場させるのは、作家生命を縮めているようで心配になる。「偽陽性」が持つ統計的危険について 説明しているときなんかには決してやらないような不手際ぶりだよ。それに、あら探しを始めたら、プロットのところどころに綻びが見えたりするんだけど……
それでも僕は、今年読んだどの本よりも"Little Brother"を推薦する。特に一人でも多くの13歳の子供たち(男の子でも女の子でも)の手に届けたいと思う。
なぜなら、この本には人生を変える力があるから。何人かの子供は(そう多くはないだろうけど)、この本を読み終えたあと、以前と同じではいられないだろ う。それが政治的な変化か、技術的な変化かはわからない。人生で愛する初めての本になるかも知れない。内なるハッカーに語りかける初めての本になるかも知 れない。この本について議論したくなるかも知れないし、否定したくなるかも知れない。コンピュータを解体して、そこに何があるか見てみようとする者もいる だろう。僕はこれを読んでいて、自分が今13歳だったらと願わずにはいられなかった。そしたら街に出て、この世界をもっと良いものに、もっと未知なるもの に、もっと奇妙なものに変えてみせただろう。多少の傷がある作品なのは否定できないけど、この本が持つ素晴らしさ、重要さの前ではまったく問題にならないね。
何で今頃……? と尋ねられたら、「今読んでるところだから」とお答えするしかありません。
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2007年12月の投稿
たった今、コリイ・ドクトロウの"Little Brother"を読み終えたところ。
僕はコリイの書く小説が好きで、短編集の推薦文を書いたこともある。でも今回の小説は、コリイのノン・フィクションだけが与えてくれる喜びを味わわせてくれるものだった。
というのも、コリイという奴は根っからの「教えたがり屋」だから。世の中で一体何が起こっているのか、何が起こっているように自分が感じるているかという ことを、周りの人たちにしゃべらずにはおれない。そして、一度「教えたがり屋」の物の見方を身につけてしまうと、二度と以前のように物事を見ることが出来 なくなってしまう。
ダグラス・アダムスはその一人だった。ブルース・スターリングは時々、ウィリアム・ギブソンもそうだな。彼らは会話の時に一番その能力を発揮する。そして フィクションよりもノン・フィクションにおいて。Malcolm Gladwellはノンフィクションでそれが出来る。(僕は彼に会ったことはないから、実際に話したときにどうかはわからない。コリイやスターリングやギ ブソンとは、直接話すのが一番だ)。
"Little Brother"は、ヤング・アダルト小説で、ハインラインのジュヴナイルに一番近いように思う。(これ誉め言葉だよ。ハインラインが子供向けに書いた本 の大部分は、ほんとに素晴らしいんだ。なんでわざわざこんなこと書くかと言うと、世の中にはハインラインを読んだことがない人、大人向けに書かれたひどい 本しか読んでいない人がいるからだ。読んでか読まないでか知らないけどハインラインとは思想的に相容れないという人もいる。彼のジュヴナイルのすごさを ちっともわかっていないんだな。)
"Little Brother"の大部分はよく出来ている。政治的論戦であり、プライバシーと情報についての小論文であり、ハッキングとクラッキングと政治についての小 論文でもある。近未来のアメリカを舞台にしたテロの物語であり、17歳の少年マーカスと暴走する国家安全保障局との対決の物語だ。
正直であること、逃げ出さないことについての、そして賢さと愚かさについての物語。この本には、思わず応援したくなる瞬間、我が意を得たりと膝を打つ瞬間、自分は年を取ったなと感じる瞬間がある。
ただし完璧な作品とは言えない。コリイが出してくる悪人は、色んな意味で悪すぎるんだ。主人公のマーカスが議論で相手をグゥの音も出ないほど打ち負かすシーンには喝采を送 りたくなるけど、やりすぎるのはどうもね。イデオロギーに関わる議論の時は、対立する意見を持ちながらも一定の見識を持った相手を登場させてもら いたかった。カール・ローヴみたいな如何にもといった悪役を登場させるのは、作家生命を縮めているようで心配になる。「偽陽性」が持つ統計的危険について 説明しているときなんかには決してやらないような不手際ぶりだよ。それに、あら探しを始めたら、プロットのところどころに綻びが見えたりするんだけど……
それでも僕は、今年読んだどの本よりも"Little Brother"を推薦する。特に一人でも多くの13歳の子供たち(男の子でも女の子でも)の手に届けたいと思う。
なぜなら、この本には人生を変える力があるから。何人かの子供は(そう多くはないだろうけど)、この本を読み終えたあと、以前と同じではいられないだろ う。それが政治的な変化か、技術的な変化かはわからない。人生で愛する初めての本になるかも知れない。内なるハッカーに語りかける初めての本になるかも知 れない。この本について議論したくなるかも知れないし、否定したくなるかも知れない。コンピュータを解体して、そこに何があるか見てみようとする者もいる だろう。僕はこれを読んでいて、自分が今13歳だったらと願わずにはいられなかった。そしたら街に出て、この世界をもっと良いものに、もっと未知なるもの に、もっと奇妙なものに変えてみせただろう。多少の傷がある作品なのは否定できないけど、この本が持つ素晴らしさ、重要さの前ではまったく問題にならないね。
Journal 2月14日付け
gnomeさんのおっしゃる通り、このところ大した記事もないんですが、だいたいまぁこんな感じということで、先日のバレンタイン・デイの投稿など、ざっくりと訳してみました。
…………………………
ほんとは明日の日曜日にダブリン入りして、その後すぐにインタビューをする予定だった。でも週の半ばで、どうもそれじゃうまくいかないことに気づいた。コララインの映画化とニューベリー賞受賞が重なったおかげで、アメリカでの2週間は朝から晩まで狂ったように動きまわってきた。ダブリンに飛んで、飛行機から降りるやいなや雑誌のインタビューが六つに、テレビのインタビューが一つ。それからダンドラムに移動して映画の紹介と質疑応答のインタビュー……これじゃ、ひどいスケジュールになってしまう。少なくとも、自分の映画の上映中に眠り込んでしまうだろう。
そういういうわけで、一日早く移動することにしたんだけど、これが正解だった。空の旅は快適なもので、隣の席にいたのが何とインターネットの創始者の一人。向こうは執筆業について知りたがり、こちらはインターネットについて知りたいときてるから、食事中も楽しくおしゃべりすることができた。こんなことめったにないんだけどね。ダブリンに到着するやいなや、魔法のようにVIPルームに連れて行かれて紅茶を出され、その後ユニヴァーサルの女性と一緒に車に乗りこんだ。すべての国際空港がこんなふうに行列なしでスムーズに物事が運んだらどんなに素晴らしいだろうかと夢想してしまうね。
我が愛するアンドロイドG1は、ここでは使えない。このブログの読者諸君は覚えてると思うけど、これはGoogleに無料で使わせてもらっている携帯電話だ。ただし、無料の代償として外国の電話サービスには接続できない。だから今は写真と音楽機能しか使えなくて、とても寂しい。昔から使ってるノキアN73は、会話中とかに突然切れたりするエキセントリックな奴なんだけど、アイルランドにいる間はこいつを使うしかないなぁ。それと、この間から携帯で文章を打つ時に表示される単語予測機能がおかしいと思ってたんだけど、どうやら一ヶ月くらい前からオランダ語の単語を予測していたみたいだ。
なにはともあれ、Happy Valentine's Day!
まるでヴァレンタインらしくない、がらんとしたダブリンのホテルですごす誰かさんより。
…………………………
ほんとは明日の日曜日にダブリン入りして、その後すぐにインタビューをする予定だった。でも週の半ばで、どうもそれじゃうまくいかないことに気づいた。コララインの映画化とニューベリー賞受賞が重なったおかげで、アメリカでの2週間は朝から晩まで狂ったように動きまわってきた。ダブリンに飛んで、飛行機から降りるやいなや雑誌のインタビューが六つに、テレビのインタビューが一つ。それからダンドラムに移動して映画の紹介と質疑応答のインタビュー……これじゃ、ひどいスケジュールになってしまう。少なくとも、自分の映画の上映中に眠り込んでしまうだろう。
そういういうわけで、一日早く移動することにしたんだけど、これが正解だった。空の旅は快適なもので、隣の席にいたのが何とインターネットの創始者の一人。向こうは執筆業について知りたがり、こちらはインターネットについて知りたいときてるから、食事中も楽しくおしゃべりすることができた。こんなことめったにないんだけどね。ダブリンに到着するやいなや、魔法のようにVIPルームに連れて行かれて紅茶を出され、その後ユニヴァーサルの女性と一緒に車に乗りこんだ。すべての国際空港がこんなふうに行列なしでスムーズに物事が運んだらどんなに素晴らしいだろうかと夢想してしまうね。
我が愛するアンドロイドG1は、ここでは使えない。このブログの読者諸君は覚えてると思うけど、これはGoogleに無料で使わせてもらっている携帯電話だ。ただし、無料の代償として外国の電話サービスには接続できない。だから今は写真と音楽機能しか使えなくて、とても寂しい。昔から使ってるノキアN73は、会話中とかに突然切れたりするエキセントリックな奴なんだけど、アイルランドにいる間はこいつを使うしかないなぁ。それと、この間から携帯で文章を打つ時に表示される単語予測機能がおかしいと思ってたんだけど、どうやら一ヶ月くらい前からオランダ語の単語を予測していたみたいだ。
なにはともあれ、Happy Valentine's Day!
まるでヴァレンタインらしくない、がらんとしたダブリンのホテルですごす誰かさんより。
2009年2月23日月曜日
2009年2月18日水曜日
2009年2月17日火曜日
Journal2月11日付け
どうもはじめまして、Gnomeさんから御招待をいただきましたauto_muttonです。 初めての作家の文章を訳す時は、一人称をどうしようか、語尾をどんな風にしようかと迷ってしまいます。今回は、『スターダスト』のインタビュー記事
(http://movie.nifty.com/cs/interview/detail/071023001842/1.htm)
を参考にして、「僕」に「ですよ」で語らせてみます。優しい感じでゲイマンらしいですね。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
2月11日 さっきエージェントと話していたら、いつの間にかAmazon Kindle のテキスト読み上げ機能をめぐって、長い討論というか議論になってしまったよ。ここにちょっとまとめてみるね。
彼女の見方はこうだ。
Kindleが本を読み上げる行為は、オーディオブックの著作権を(少なくとも何がしかの権利を)侵害している。我々はオーディオブックの権利と印刷された本の権利を別々のものとして販売している。我々は侵害行為を止めさせなければならない。
僕の見方はこう。
人が一冊の本を買うとき、色々な権利も一緒に買い取ってるんじゃないだろうか。声に出して読む権利、誰かに声に出して読んでもらう権利、車の長旅の間に子供たちに読み聞かせる権利、自分で朗読したテープを恋人に贈る権利、等々。Kindleがやってる事はそれと何も変わっちゃいない。ただKindleの声はすごく変だから、誰もオーディオブックと勘違いしたりしないだけだ。無意味な訴訟に金を費やそうという作家グループや出版社があるんなら言っておくけど、そんな事をする金があるならオーディオブックの宣伝に使ったほうがずっと効果的だと思うよ。人の声で語られるということが一体どういうことで、それがどんなに素晴らしいものかってことをね。
誰かに尋ねられるかも知れないから、ここに僕の考えを書いておくよ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
内容は、先日Amazon.com が発表した電子書籍リーダー「Amazon Kindle 2」のテキスト読み上げ機能について。コンピュータが無機質な声で英語のテキストを読み上げるだけなら、大抵のパソコンに実装されている機能なので、何を今更という気がしますね。
ゲイマンがブログで言及しているのは、Wall Street Journalのこちらの記事にあるAuthors Guildのことでしょう。 “They don’t have the right to read a book out loud,” said Paul Aiken, executive director of the Authors Guild. “That’s an audio right, which is derivative under copyright law.” (http://online.wsj.com/article/SB123419309890963869.html)
こりゃ確かに酷い。「連中に本を声に出して読む権利なんかないんだ」と本当に言ってますね。
投稿:auto_mutton
(http://movie.nifty.com/cs/interview/detail/071023001842/1.htm)
を参考にして、「僕」に「ですよ」で語らせてみます。優しい感じでゲイマンらしいですね。
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2月11日 さっきエージェントと話していたら、いつの間にかAmazon Kindle のテキスト読み上げ機能をめぐって、長い討論というか議論になってしまったよ。ここにちょっとまとめてみるね。
彼女の見方はこうだ。
Kindleが本を読み上げる行為は、オーディオブックの著作権を(少なくとも何がしかの権利を)侵害している。我々はオーディオブックの権利と印刷された本の権利を別々のものとして販売している。我々は侵害行為を止めさせなければならない。
僕の見方はこう。
人が一冊の本を買うとき、色々な権利も一緒に買い取ってるんじゃないだろうか。声に出して読む権利、誰かに声に出して読んでもらう権利、車の長旅の間に子供たちに読み聞かせる権利、自分で朗読したテープを恋人に贈る権利、等々。Kindleがやってる事はそれと何も変わっちゃいない。ただKindleの声はすごく変だから、誰もオーディオブックと勘違いしたりしないだけだ。無意味な訴訟に金を費やそうという作家グループや出版社があるんなら言っておくけど、そんな事をする金があるならオーディオブックの宣伝に使ったほうがずっと効果的だと思うよ。人の声で語られるということが一体どういうことで、それがどんなに素晴らしいものかってことをね。
誰かに尋ねられるかも知れないから、ここに僕の考えを書いておくよ。
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内容は、先日Amazon.com が発表した電子書籍リーダー「Amazon Kindle 2」のテキスト読み上げ機能について。コンピュータが無機質な声で英語のテキストを読み上げるだけなら、大抵のパソコンに実装されている機能なので、何を今更という気がしますね。
ゲイマンがブログで言及しているのは、Wall Street Journalのこちらの記事にあるAuthors Guildのことでしょう。 “They don’t have the right to read a book out loud,” said Paul Aiken, executive director of the Authors Guild. “That’s an audio right, which is derivative under copyright law.” (http://online.wsj.com/article/SB123419309890963869.html)
こりゃ確かに酷い。「連中に本を声に出して読む権利なんかないんだ」と本当に言ってますね。
投稿:auto_mutton
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